毎日の習慣
気分の記録は、何のためのものか
この一か月どうでしたかと聞かれると、今日の気分から答えてしまいます。これは気をつけて直せる記憶の問題ではありません。そして、それこそが書き留めることの効く理由です。
短い答え
気分の記録が効くのは、自分がどうだったかの記憶が、決まったかたちであてにならないからです。今感じていることが、それ以前の記憶の色を決めてしまいます。つらい火曜日は、本当に「いつもこうだ」になります。1日ひとつの数字を残すと、それに反論してくれる外側の記録ができます。自分の推移を実際に見た人の多くは、本当に低かった日が思っていたよりまばらで少ないことに驚きます。中から気づけない引き金や周期を浮かび上がらせるのが、いちばんの得意です。逆効果になるのは、確認することが一日中の自己監視に変わったときです。
記憶は、あてにならない証人です
思い出しは気分に沿います。思い出すときの状態が、何を取り出すかを決めます。落ちているときは、落ちていた週から先に手が届き、平らな週のほうが代表のように感じられます。調子がいいときは、先月がやわらかくなります。
だから「最近どうでしたか」は、ほとんど今日が答えています。つらい週に「ずっとこうだった」がどうしようもなく本当に感じられて、実際にはそうでないことが多いのは、そのためです。もっと客観的になろうと努力しても、これは直りません。直すのは、記録です。
要点を一行で
記録は、つけた日のためのものではありません。三か月後に、自分に反論してくれるものが手元にあるためのものです。
推移の線が、実際に見せてくれるもの
説明では伝わりにくく、体験するとまったく違う部分です。推移の表示は、記録を色のついた線にします。上のほうが緑、そこから青緑と紫を通って、下のほうはオレンジと赤へ。そして、そのうち実際にオレンジや赤なのはどれくらいかを見ます。
多くの人にとって、思っていたより少なくなります。ネガティビティ・バイアスのために、つらい日はより鮮明に保存されて先に取り出されるので、「ずっと低かった」という体感は記録よりかなり先を走ります。低い点が、広がっていく模様ではなく、いつもの範囲に戻っていく中に散らばったいくつかの点として見えること。それが、言葉ではなく目でなされる訂正です。誰の言葉も — 自分の言葉さえ — 信じる必要がありません。
カレンダーの表示は、別の角度から同じことをします。記録した日それぞれに、低いから高いまでの同じ色の階調がつくので、ひと月がひと目で受け取れるものになります。信じるしかない数字ではなく。ほとんどが緑と青緑で、オレンジの日がいくつか散らばっているひと月は、「8割の日は大丈夫でした」という一文とは違うふうに届きます。同じ情報なのに。
これが効く理由
別々の仕組みが二つ、同じ方向を指しています。ネガティビティ・バイアスによって、つらい日はよい日やふつうの日より重く記憶に残ります。だから見える記録は、作り物ではなく本物のゆがみを訂正しています。そして、自分がやってこられた目に見える証拠 — ほとんど緑のひと月、続いた記録 — は、本物の自信のかなり確かな源です。思い出そうとするより、証拠を見ているほうが、やれていると信じやすくなります。
続けた日数の表示も、同じ理屈で働きます。数そのものはほとんど関係ありません。自分が現れたという、小さくてくり返される証拠であること。それが、いちばんつらかった日にはいちばん思い出しにくいものです。
アプリの思いつきではなく、本物の技法です
自己観察は認知行動療法の標準的な要素で、アプリが考え出したものではありません。専門家は何十年も、気分や思考の記録を使ってきました。理由は二つあります。
ひとつはデータです。一週間の中からは見えないパターンが、二か月を通すとはっきりします。もうひとつは、あまり言われませんが、記録するという行為そのものが小さな介入だということです。自分が今どこにいるかを名づけると、その中に全部入っている状態が途切れます。感情に名前をつけるのと同じ仕組みです。
何を記録するか
- ひとつの数字が、一段落に勝ちます。毎日ちゃんとつけられる評価ひとつは、木曜日にはやめている日記より値打ちがあります。続くことが値打ちのすべてです。穴だらけの記録は、推移を見せてくれません。
- だいたい同じ時間に。気分には一日の形があります。朝7時の記録と夜10時の記録を比べると、ほとんど時刻を測っていることになり、ほかのすべてが濁ります。
- ひと言で済むなら、状況も。「よく眠れなかった」「締め切り」。あとで思い出せる程度で、面倒になる手前まで。
- よかった日も飛ばさないで。それが比べる相手です。つらい日だけの記録は、つらい日につけたことを証明するだけです。
実際に何を見るか
その日の数字ではありません。日々の数字は雑音で、それをじっと見ることが、記録がおかしくなる道です。
- 数週間の形。下の線は上がっていますか。落ち込みは前より短くなっていますか。いちばん高いところより、戻る速さのほうが大事です。
- 落ち込みの隣にあるもの。低い日そのものではなく、その2日前に何があったかを見てください。睡眠、お酒、片づいていない会話、日曜日。
- 気づけない周期。週の周期、月の周期、季節の周期。中からはほとんど見えず、図にすると明らかになります。
- 物語に反論する証拠。いちばん役に立つのは、頭がずっとこうだったと言い張っているときに、そこそこだった8週間を見る瞬間です。
それが反すうに変わるとき
誰も注意してくれない失敗のかたちです。記録は、その瞬間を一枚撮って、あとは一日を続けるためのものです。おかしくなるのは、それが実況に変わったときです。1時間おきに自分の気分を確かめ、自分に点をつけ、低い数字を失敗として扱う。
その時点で、自己監視の習慣を作って、自己理解の名前をつけたことになります。それは良くする方向には働きません。目印はこれです。
- 1日に1回ではなく、何度も確認している。
- 低い記録が、情報ではなく悪い点数のように感じられる。
- 今日と昨日をずっと比べている。
- 数字で、今日がどんな日かを決めはじめている。
そうなっているなら、増やすのではなく減らしてください。そして見返すこと自体が輪になっているなら、考えすぎをやめたいときがそのまま当てはまります。
そのデータがどこにあるかは、大事です
何かを選ぶ前に考えておく値打ちがあります。気分の記録は、あなたがこれから作るもののうち、いちばん繊細な記録のひとつです。日付のついた、こころの健康の履歴です。サーバーに置く記録アプリは少なくありませんし、それでお金にしてきたものもあります。
centered space では、パターンの記録はあなたの端末に保存されます。アップロードも、販売もされず、あなたの身元に結びつけられることもありません。あとから足した機能ではなく、意図した制約です。ウェブの管理画面がないのは、そのためです。
パターンそのものが答えのとき
記録は気づくための道具で、治療ではありません。低い時期が続いている、はっきりした季節の形がある、落ち込みが深くなり続けている。そういう記録は、医師や専門家に持っていく材料として本当に役に立ちます。10分の診察で半年を記憶から組み立て直すより、ずっと確かな証拠です。
いちばんいい使い道は、たぶんそこです。自分で診断することではなく、指さすものを持って行くことです。
よくある質問
気分の記録は本当に役に立ちますか。
役に立ちます。仕組みもはっきりしています。自分がどうだったかの記憶は気分に沿うので、今の感じが過去の思い出し方を染めます。だから書いた記録は、頭が「ずっとこんなに悪かった」と言うときに反論してくれるものになります。自己観察は認知行動療法の標準的な要素でもあり、アプリの発明ではありません。
気分の記録には何を書けばいいですか。
だいたい同じ時間に、数字をひとつ。状況を足すなら、多くてもひと言まで。1週間でやめてしまう日記より、続けられる評価ひとつのほうが値打ちがあります。続くことが、推移を見せてくれる条件だからです。よかった日も記録してください。落ち込みに意味をくれる比較相手です。
気分の記録で不安が強くなることはありますか。
あります。確認することが1日1枚の記録ではなく実況に変わったときです。1日に何度もつけている、低い点数を情報ではなく失敗として扱っている、数字で今日の良し悪しを決めている。そういうときは、増やすのではなく減らしてください。
記録を見返すとき、何を見ればいいですか。
その日の数字ではありません。ほとんど雑音です。数週間の形 — 下の線が上がっているか、落ち込みが短くなっているか — と、低い日そのものではなくその2日前に何があったかを見てください。週・月・季節の周期は、中からはほとんど見えず、図にすると明らかになります。
カレンダーや推移で気分を見ると、どうして安心するのですか。
二つの仕組みが同じ方向を指しています。ネガティビティ・バイアスによって、つらい日はよい日やふつうの日より鮮明に保存され、先に思い出されます。だから、どれだけつらかったかの体感は記録より先を走ります。低い日が広がる模様ではなく散らばったいくつかの点として見えると、そのゆがみが訂正されます。それとは別に、自分がやってこられた目に見える証拠は、本物の自信のかなり確かな源です。ほとんど緑のひと月や、続いた記録が、情報以上の安心として届くのはそのためです。
これは医療上の助言ではありません。一般的なウェルネスの手法であり、医学的・精神的な状態の治療ではありません。不安や気分の落ち込み、頭から離れない考えが日常生活に影響しているなら、医師や専門家に相談してください。危機的な状況では、お住まいの地域の緊急連絡先や相談窓口に連絡してください。
出典
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- Shiffman, S., Stone, A. A. & Hufford, M. R. (2008). Ecological momentary assessment. Annual Review of Clinical Psychology.(英語)
- Bower, G. H. (1981). Mood and memory. American Psychologist — 気分に沿った思い出しについて。(英語)
- Baumeister, R. F., Bratslavsky, E., Finkenauer, C. & Vohs, K. D. (2001). Bad is stronger than good. Review of General Psychology — ネガティビティ・バイアスについて。(英語)
- Bandura, A. (1977). Self-efficacy: toward a unifying theory of behavioral change. Psychological Review — 自分の力の直接の証拠が、自己効力感のいちばん強い源であることについて。(英語)